『生きて行く私』

梶井基次郎氏が少しだけ登場している、という理由でずっと読みたかった宇野千代さんの自伝。今回の東京旅行のお供に選びました。

急に大金持ちになったり、突然借金に追われたりとジェットコースターのような人生であるにも関わらず、なぜか安心して読めます。波瀾万丈の部分をそぎ落とすように淡々と語っているわけではないのに不思議です。きっとそれは、千代さんがどんな状況でもそこに留まることなく、常に次の行動に移っているからなのでしょう。

千代さんの文章に表れているお人柄は本当に素敵です。まず、悪口や皮肉がありません。日本文化史上に残るすごい作家さんがたくさん登場しますが、いたって自然。びっくりするぐらいの恋愛遍歴も、ちょっとした自慢も何だかキュートな感じなのです。だって宇野千代さんだもの、と読みながら納得している私という読者。これって、すごいことです。

 * * *

ところで、本筋とは少しずれますが、谷崎潤一郎氏のことを書いた文章がありました。谷崎氏の駆け出しの頃の作品の青さにびっくりした時、「自分が書いたもの以外読まない」と言っていた氏の言葉を回顧して「この自作に対する大自信が、(中略)人の心を揺るがすような大傑作を書くことの出来た、その秘密ではないか」と綴っています。

自作への自信。

文学の巨匠の言葉から“芯がぶれないことが重要”ということを小さなクリエイターである私は学んだような気がしています。

 * * *

さて、ちょうど東京旅行2日間で読了。
約1世紀ぶんの人生が、ぎゅっと詰まったたおやかな1冊でした。
若い女の子にも読んでほしい、です。

JUGEMテーマ:読書
評価:
宇野 千代
角川書店
¥ 620
(1996-02)


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